「こっちが本物。偽物は少し笑っています」
そう説明されても、
「……どっちも微妙に笑ってない?」
そんな経験から、自分の「ものの見え方」に気づくことがあります。

子ども向けゲームなのに、どうしても見分けられない

人気ゲームの『あつまれ どうぶつの森』には、美術品の本物と偽物を見分け、本物だけが美術館に寄贈出来るという要素があります。

贋作はモナ・リザに眉がある、ダビデ像が本を持っている、など簡単なものから、よく見ないとわからないものまで様々です。
そんな中でもなかなか難しいのが、「いしあたまなちょうこく(巨石人頭像/オルメカヘッド)」。

本物と偽物の違いは、なんと口元です。
インターネットで公開されている、有志による攻略情報を見ると「偽物は口角が上がっている」と説明されています。

確かに2つを横に並べれば、「言われてみれば、こっちのほうが少し笑っているかも……?」と違いが分かります。

ところが、ゲームの中で1つだけ置かれていると途端に分からない。
本物を見ても少し笑っているように感じるし、偽物を見ても「そんなに笑っている?」と思ってしまう。

これは単なるゲームの苦手分野かもしれません。

でも、もし日常生活でも似た経験があるとしたら、自分の認知の特徴を知る小さなヒントになることがあります。

「顔を見れば分かる」が、よく分からない

たとえば、
「見たら怒ってる、悲しんでいるって分かるでしょ」
「明らかに嫌そうな顔や態度をしていたよ」
「笑顔で嬉しそうだったから、大丈夫だと思った」
こんな会話を聞いて、
「……ほかの人は、そんなにはっきり分かるものなの?」
と思ったことはありませんか?

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、相手の表情や態度などの非言語的な情報を読み取ることに難しさを感じる方がいます。
自閉スペクトラムの特性の一例として、相手の表情や態度など曖昧なものよりも、文字や図形、物など形や要素が決まっているものに関心が向きやすい場合があるのです。

顔や表情の認識についても、ASDのある人とそうでない人との間に平均的な違いがみられることが研究されています。

ただし、ASDの人の中には、表情を読むのが苦手な人もいますが、「表情を読むのが苦手だからASD」というわけではありません。
ASDの特性の現れ方には大きな個人差があり、似た傾向はASDではない人にも見られます。

「苦手」を知ると、工夫できることもある

大切なのは、自分を無理やり「普通」に合わせることではなく、
「私は曖昧な表情だけでは判断しづらいんだ」
と、自分の認知の特徴を知ることです。

たとえば、「怒ってる?」と表情を何度も推測するより、
「もし嫌だったらすぐに言ってほしいな」とお願いしてみる。

「なるべく早くね」など曖昧な指示が苦手なら、「〇日までに100%の完成度をあげてほしい」と具体的な言葉に置き換えてもらう。

自分の特徴が分かると、「できない」で終わらせず、自分に合った方法を探せるようになります。

日常の「なんでだろう?」から、自分を知っていく

発達特性は、仕事や学校で大きく困ったときだけ見つかるものとは限りません。

ゲームをしているとき。
人と雑談しているとき。
LINEの文章を何度も読み返しているとき。

そんな何気ない場面で、
「他の人は簡単そうなのに、私はここが難しい」
と気づくことがあります。

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「診断があるから利用する場所」ではありません。
「自分のことを、もう少し知りたい」
そんなところから始めても大丈夫です。

ゲームの石像の違いが分からない――。
そんな小さな「なんで?」も、自分自身を知る入口になるかもしれません。

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