今回は、以前ご紹介した精神科をテーマにした漫画『Shrink~精神科医ヨワイ~』の感想コラムです。
よろしければ、前回の記事と併せてご覧ください。

『Shrink~精神科医ヨワイ~』ってどんな話?

精神科訪問看護や精神科デイケアに興味はあるものの、「実際にどんな支援をしているのか」「医師や他職種とどう関わっているのか」が分かりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する『Shrink~精神科医ヨワイ~』16巻・17巻は、精神科医療が病院の中だけで完結するものではなく、訪問看護やデイケアといった地域支援がどのように利用者さまの生活を支えているのかを、非常に丁寧に描いています。
現場で働く方はもちろん、これから精神科領域に関わってみたいと考えている方にも、ぜひ読んでほしいエピソードです。

昨年9月末発売の16巻、そして今月19日発売の17巻には、知人との些細なやり取りや人間関係のもつれをきっかけに、統合失調症を発症した大学生・桐生悠貴くんのお話が収録されています。
悠貴くんは、統合失調症の急性期、そしてその後の消耗期において、自分の部屋から出ることができずにいました。
母親の知恵さんが代わりに、主人公である弱井先生のクリニックへ通いますが、それだけでは「悠貴くんの家庭での本当の姿」を知ることはできません。

そこで、訪問看護師に転職した白鳥さんが、桐生家を訪問することになります。
クリニックや病院の中だけでは完結しない精神医療の現実。
混乱し、消沈する本人と、疲弊していく家族。

先の見えない状況の中で、訪問看護師が笑顔で「こんにちは!」と駆けつけてくれる場面は、本作の中でも特に印象的なシーンの一つです。

本人だけでなく、家族のためのものでもある「訪問看護師」という仕事

白鳥さんは、部屋で横になっている悠貴くんだけでなく、母親の知恵さんにも丁寧に声をかけます。
寝てばかりで返事ができない悠貴くんに対して、「すみません、あの子……」と知恵さんがこぼすと、「気になさらないでください」「ご本人のペースを尊重して関わっていきたいので」と、穏やかにフォローします。
また、「よかったら使ってください!」と、笑顔で服薬カレンダーを手渡す場面も描かれています。

精神疾患は、罹患した本人だけでなく、ご家族にも大きな不安や負担をもたらします。
「一番つらいのは本人だから」と気丈に振る舞い、どうしていいかわからないまま、誰にも相談できずに抱え込んでいるご家族も少なくありません。

そのため、訪問看護という仕事は、ご本人のためだけでなく、ご家族のための支援でもあるのです。

「今までおひとりで背負ってきたその荷物を、どうか僕にも一緒に持たせてください」

という白鳥さんの言葉は、きっと知恵さんにとって大きな安心につながったのではないでしょうか。

訪問看護師と精神科医、それぞれの役割

白鳥さんが桐生家を訪問し、そこで見た家庭での悠貴くんや知恵さんの様子は、主治医である弱井先生にも共有されます。

「自室の机に残薬(大量)あり。服用後に不快な症状が出たため、自己判断で断薬し、調子を崩したようです」

この訪問看護報告書を読むことで、悠貴くんがなかなか離床できていない原因を推察することができました。
そこで次の診察時に、弱井先生が服薬方法や処方の変更を提案し、結果として無事に服薬を再開することができたのです。

訪問看護によって原因が明らかになり、次の回復のステップへ進めたというエピソードは、非常に印象的でした。

統合失調症に限らず、パニック障害など他の精神疾患や精神障害においても、外出して医師に自分の状態を説明することは、非常に高いハードルを伴います。
たとえば医師から「お元気ですか?調子はどうですか?」と聞かれたとします。
ご本人にとっては、クリニックまで来て、医師や看護師、受付スタッフと話せている時点で、「調子が良いのでは?」と判断してしまうことも少なくありません。
日常生活で困りごとがあっても、それをうまく言葉にできず、結果として医師が「問題なし」と判断してしまうこともあります。

訪問看護師は、そうした「日常で困っていること」そのものを直接見ることができる支援者です。
だからこそ、その情報を医師に共有することができ、治療方針の見直しにつなげることができるのです。

訪問看護師は、医師の代わりではありません。
しかし、精神科医一人では決して担いきれない部分を、確実に埋めていく存在です。
本作は、その関係性を誇張することなく、理想化しすぎることもなく描いていると感じました。

作業療法から精神科デイケアへ

訪問看護の導入により外出できるまで回復した悠貴くんでしたが、父親の干渉により、コンビニでアルバイトを始めることになります。
しかし、統合失調症による認知機能の低下の影響もあり、マルチタスクをうまくこなすことができず、早々に退職することとなりました。

そこで次に提案されたのが、作業療法への通所です。
作業療法士にマッサージをしてもらい、リラックスする感覚を取り戻したり、認知機能の向上を目的とした間違い探しに取り組んだりします。

いきなりデイケアや自立訓練、就労移行支援に通うことが難しい場合、作業療法を退院後支援として取り入れることは、非常に理想的な形だと語られています。

「勇気を出して扉を開けた先には、できるだけ多くの『支える手』が待っているべきだよ」
弱井先生のこの言葉が、強く印象に残りました。

精神科の主治医、心理士、訪問看護師、作業療法士――多くの「支える手」と出会った悠貴くんは、次のステップとして精神科デイケアへと進みます。

ちょっとだけ優しい社会――「精神科デイケア」へ

回復期に入った悠貴くんは、引きこもり防止を目的とした作業療法から、精神科デイケアへの通所へと移行します。
集団療法に参加することで、社会認知能力や、人と関わる感覚を少しずつ取り戻していきます。

そこでは支援者だけでなく、同じくデイケアに通う利用者同士の交流も生まれます。
人と人との関係ですから、うまくいくこともあれば、失敗してしまうこともあります。

そして、デイケアで起こるトラブルは、実際の社会で起こるトラブルでもあるのです。
「大切なのは、トラブルを起こさないことではなく、起きたときにどう対処するかを考えておくこと」
この弱井先生の言葉は、問題が起こるくらいならと人間関係を回避しがちな私自身にも、強く刺さりました。

訪問看護とデイケア、それぞれの役割

訪問看護は「生活を崩さない支援」、デイケアや自立訓練は「生活を広げる支援」と言えるでしょう。
作中でも、訪問看護師が体調や服薬を含めた生活状況を整え、デイケアが人との関わりや役割感を取り戻す場として機能しています。

どちらか一方では不十分で、両輪がそろって初めて支援が前に進む

この関係性がごく自然に描かれている点は、看護師、精神保健福祉士、自治体の保健師など、さまざまな職種の医療者・支援者が登場する『Shrink』ならではだと感じました。

「できること」を増やす支援

訪問看護やデイケアの本質は、無理に症状や病気を「治す」ことではありません。
「今日は看護師と話せた」
「今日は最後までデイケアにいられた」
――その積み重ねが、自己肯定感と生活の安定につながっていきます。

17巻では、悠貴くんやほかの利用者が少しずつ自分の居場所ややりたいことを見つけていく過程が描かれていますが、その背景には、デイケアスタッフの見守りや、失敗を責めない空気があります。
これは、訪問看護と同じく、継続を支える専門職の姿そのものです。

支援は一人で完結しない

『Shrink』16・17巻が伝えてくれるのは、「誰か一人が頑張れば救える」という幻想ではありません。
医師、訪問看護師、デイケアスタッフ、それぞれが自分の持ち場で役割を果たし、つなぎ合うことで、利用者さまの生活は成り立っています。

精神科訪問看護や自立支援は派手ではありません。
しかし、確かに人の生活を支えている仕事です。
『Shrink~精神科医ヨワイ~』は、精神医療に関わるすべての人にとって、自分たちの仕事を静かに肯定してくれる作品です。

ぜひ一度、手に取って読んでみてください。

大阪府・奈良県・東京都の3エリアで精神科訪問看護師を募集しています

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